東葛病院 地域に根ざしてともに歩む
 

東葛の健康

No.278 2007年9月号

アスベスト精密検査、職業性肺疾患への取り組み
じん肺、肺がんの早期発見につながった

写真 東葛病院では、2005年度から、千葉土建一般労働組合とタイアップして、健康診断で撮ったX線胸部正面写真を職業性肺疾患の専門医が再読影し、異常所見を認めた例について、胸部のコンピューター断層検査(CT検査)といった精密検査を勧めてきました。2005年から合計181例の方が検査を受け、半数にアスベスト関連の所見が認められ、2名がじん肺の認定を受け、2名に健康管理手帳が交付されました。また、アスベスト肺がんでの労災申請も3名に認められ、着々と成果をあげていますのでその活動の一端を紹介します。  副院長(呼吸器外科) 川村光夫

CT検査181名中90名に異常所見

胸膜肥厚斑の術中写真と胸部CT像
胸膜肥厚斑の術中写真と胸部CT像

今回の検診で発見された肺がんのCT像
今回の検診で発見された肺がんのCT像

 健康診断で撮った胸部正面写真を職業性肺疾患の専門医が再読影し、異常所見を認めた例については、胸部CT検査といった精密検査を行ってきました。2005年と2006年の2年間で、合計181例の方が来院され、胸部CT検査が行われました。これを当院の呼吸器専門医が国際分類に従い読影し、即日結果を説明しました。
 その結果、アスベスト暴露により胸膜が部分的に厚くなる胸膜肥厚斑や石綿肺(アスベストによるじん肺のことをいいます)などの所見が認められたのは90名と約半数に上りました。
 また、2006年には胸部CT検査で小型の肺がん(腺がん)が発見され、呼吸器外科にて根治切除手術を受け、胸膜肥厚斑と職歴から労災認定を申請中の患者さんもいます。

9名がじん肺申請

 現在、じん肺申請は申請中を含めて9名で、うち2名がじん肺の認定を受けました。また、じん肺とは認められなかったものの「健康管理手帳」の交付を受けた方が2名いました。
 健康管理手帳とは、アスベストに暴露されたことを公的に認めたもので、今後合併症が出現したときには労災認定となる有力な証拠になります。

2名が石綿肺がんで労災認定うける

 また、肺がん手術の際に、アスベストによる胸膜肥厚斑が偶然に見つかる場合も少なくなく、その場合は、10年以上のアスベスト関連の職歴があれば労災認定の手続きをお勧めしていますが、2名の患者さんがアスベストによる肺がんとの労災認定をうけました。
 また、一人親方で労災に未加入のため申請できなかった肺がんの患者さんは、昨年アスベスト救済新法が制定されたことにより、切除肺組織のアスベスト小体の数の検査を専門の労災病院に依頼し、大量のアスベスト小体を認めたことからアスベスト肺がんと認められました。
 こういった成果は、実際の読影や手術を行った診療部門(呼吸器科)のみならず、検診の実務を担った検診センター、じん肺や労災申請の手続きを援助してくれた相談室、日曜日に集中的にCT検査を行ってくれた放射線科などの協力によるものです。

「じん肺アスベスト患者と家族の会」の結成総会であいさつする小菅会長(写真中央)
「じん肺アスベスト患者と家族の会」の結成
総会であいさつする小菅会長(写真中央)

「じん肺アスベスト患者と家族の会」を結成

 今年の4月に千葉土建は「じん肺アスベスト患者と家族の会」を結成し、当院で手術を受けアスベスト肺がんの労災認定を受けた小菅洋一さん(松戸市)が、会長に就任されました。結成総会で小菅さんは「健診が大切、早期発見、早期治療です」とあいさつ。
 今後、じん肺による健康障害を受けた患者さんとその家族の相互交流と激励しあえる場として期待され、地域を含めた運動が進んでいます。



来年4月から高齢者に過酷な医療費負担
「悪法見直せ」の世論広げよう

 来年4月から75歳以上を対象にした「後期高齢者医療制度」が始まります。同時に70歳〜74歳の窓口負担は2割になります。昨年6月に自・公が成立させた医療法の改悪によるもので、高齢者に過酷な負担を強いる「悪法の全面見直し」が求められています。

75歳以上の新たな保険制度

 来年4月から75歳以上は、いま加入している国民健康保険や組合健康保険などから脱退させられ、新たな「後期高齢者医療制度」に入ることになります。この制度では、75歳以上のすべての人が保険料を支払わなければなりません。現在、家族の扶養になっており保険料負担がない人も例外ではありません。
 保険料は厚労省の試算によると、平均で1人あたり月6200円にもなります。

保険料は年金から天引き

 年金受給月額が1万5000円以上の人は、保険料が年金から天引きされます。すでに天引きされている介護保険料と合わせると、平均で月1万円以上も引かれることになり、75歳以上の約8割が対象者です。
しかもこれに便乗して来年4月以降は、65歳以上の国保料も年金から天引きされることになります。
 後期高齢者医療制度の導入にあわせ、来年4月から70歳〜74歳の窓口負担も、現行の1割負担から2割に引き上げられます。

滞納者から保険証取り上げ

 それだけではありません。国保料を滞納しても、75歳以上には禁止されてきた保険証の取り上げが、4月からは75歳以上にも適応されることになります。

中身を知れば怒りが

 後期高齢者医療制度は、多くのお年寄りから医療を奪うものであり、このまま実施を許すわけにはいきません。制度の大幅な是正を求める署名や宣伝活動などに取り組み、国民に実態を知らせ、「悪法を見直せ」の世論を広げましょう。

千葉県後期高齢者医療連合長への要請項目

・高齢者の生活実態に即した保険料にすること
・「資格証明書」を発行しないこと
・保険料の減免制度を独自に作ること
・健診は今までどおり、希望者全員が受けられるようにすること
・高齢者の意見を反映できる仕組みを作ること

来年4月からのお年寄りの医療費の窓口負担と保険料



シリーズけんさ(23)

指先にセットした測定器(パルスオキシメーター)
指先にセットした測定器
(パルスオキシメーター)

動脈血酸素飽和度モニターとは

 「動脈血酸素飽和度モニター」とは、血液中の酸素の運搬を行うヘモグロビンが、酸素と結合している割合が何%か表したものです。喘息や睡眠時無呼吸症候群など、体中に酸素が行き届かず、苦しい度合いを数字に表したものです。
 検査法は、指先に赤い光を発生する機械をつけて、10秒ほどすれば測定可能です。痛くはありません。正常値は98〜100%で数値が低いということは、酸素が少なく、組織の活性が低下していることを意味します。
 最近話題の睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査に有効で、就寝中に時々10数秒呼吸が止まっていると言われたかたや、いびきのため充分な睡眠が得られず、日中居眠りの多いかたは、ぜひこの検査をしてみてはいかがでしょうか。

検査技師 前後洋之



写真クスリ あ・れ・こ・れ

暑さが続きます。熱中症に注意!

発熱・脱水症に『経口補水療法』

薬剤師 青木千紘

 近年、医療を衛生的に行なえない環境にある地域で、点滴に代わる補液療法として『経口補水療法』が注目されています。発熱や脱水症で奪われるのは水分だけでなく、電解質も一緒に出てしまいます。
 効率よく体に水分を補うためには、普通の水ではなく電解質や糖を加え体液の濃度より薄くした『ハイポトニック飲料』があります。スポーツ飲料の一部が『ハイポトニック飲料』になっています。
 以前は体液の濃度と同じにしてある『アイソトニック飲料』が吸収がよいという考え方でした。最近では『ハイポトニック飲料』が腸に届きやすく、かつ体液より浸透圧が低いことで素早い水分吸収ができると考えられるようになりました。
 浸透圧とは、水が濃度の低い方から高い方へ移動し、等張(同じ濃度)にしようとする力のことです。普通の水やお茶だけを飲むと体液を薄めてしまい、飲んだ以上に尿として排泄してしまうため、水分を摂っているのに逆に脱水になってしまうことがあります。
 夏は熱中症で病院に運ばれる方が増えます。人の体は、環境の温度が変化しても、一定の体温を保てる調節機能があります。
 しかし、夏の炎天下など高温多湿の環境に長時間いたり、激しい運動をした時にこの調節機能が働かなくなることがあり、体内の熱を放散できず異常に体温が上昇し脱水症状を起こします。熱中症で死亡する人は多い年で100人を超えるそうです。
 『経口補水療法』の注意として、心臓の病気・腎臓の病気・高血圧症など、塩分制限やカリウム制限といわれている方には適さないことがあります。
 心配な方は医師に相談してください。
 まだまだ暑い日が続きます。夏の脱水症や熱中症の予防には十分な水分補給を心がけましょう。



聴診器

生ましめんかな

 ▼8月になると、核兵器廃絶への催しが各所で行われるが、俳優の吉永小百合さんも原爆詩の朗読を続けている。吉永さんはテレビと映画で放映された「夢千代日記」の中で胎内被曝の女性を演じており、ヒロシマとの関係も深く毎年詩の朗読会が開催されている▼朗読された詩の中に「生ましめんかな」という詩がある。場面は、原爆投下直後に避難してきた負傷者でいっぱいになったビルの地下室であり、血の臭いや死臭が漂っている。そこで、突然若い女性が産気付いてしまう。皆が困惑している中、それまで瀕死の重傷でうめいていた産婆が「私が産ませましょう」と立ち上がって赤ん坊を取り上げた話である▼これは実際にあったことを題材にしたもので、その後、産婆は血まみれのまま亡くなるが、産まれた赤ん坊は立派に育ち自らも母となる。想像を絶する惨劇にあいながらも不屈の精神で立ち向かう人間の生命の力強さが感じられる▼ヒロシマ、ナガサキは二度と繰り返してははならない。   K



東葛病院・付属診療所の医療活動



関東直下型

東葛地方の地震にどう備えるか (上)

 今年7月に発生した新潟県中越沖の地震は、改めて地震の恐ろしさを認識させるものでした。そこで主に、おこりうる関東直下地震について、茨城大学名誉教授・理学博士(地球物理学)藤井陽一郎氏に、特別寄稿をいただきました。2回にわたり掲載します。

はじめに

写真 このたびの中越沖地震は、老朽化した木造家屋の倒壊・ライフラインの途絶・交通網切断・高齢者の圧死など、再び大きな被害をもたらしました。また震源域の真上に位置した柏崎刈羽原子力発電所の1948ヶ所の損傷・トラブルは現行耐震基準にのっとって作られた原発は直下型地震に耐えないことを明白に示しました。
 関東地方は新たな地震の活動期に入っており、直下型地震についてはその発生が切迫していることと発生した時の被害が甚大であることにより、地震防災の強化は緊急の課題になっています。ここでは東葛地方を念頭に置きながら関東直下地震にどう備えるかを考えて見たいと思います。

関東地方のプレート構造と被害地震

図 首都直下で発生する地震のタイプ「首都直下地震対策専門調査会提出資料による」
図 首都直下で発生する地震のタイプ
  「首都直下地震対策専門調査会提出資料による」

 地震は大陸や海洋底を構成している大岩盤であるプレートの運動により発生します。南関東では、関東地方の属する北アメリカプレートの下に、フィリッピン海プレートが相模湾で沈み込み、さらにその下へ太平洋プレートが潜り込んでいるというように、3枚のプレートが重なり合った複雑な構造となっています。このために地震の発生は極めて多様ですが、それでも近年の微小な地震の発生まで含めた観測結果の研究により、次の5つのパターンに分類できることが判明してきました(附図参照)。
(1)内陸部の活断層の地 震
(2)フィリッピン海プレ ートの上面(陸のプ レートとの境界)の 地震(例:1923 年関東大震災)
(3)フィリッピン海プレート内部の地震(例:1987年千葉県東方沖の地震)
(4)太平洋プレートの上 面(フィリッピン海 プレート下部との境 界)の地震
(5)太平洋プレート内部 の地震
  防災上は、このうち(4)と(5)のタイプの地震については(2)のタイプの地震に包括して考えることができるので、想定直下地震としては(1)内陸部の活断層の地震(2)フィリッピン海プレートの上面の地震(3)フィリッピン海プレート内部の地震に絞り込むことができます。過去の地震により出来た地球表面の割れ目を断層といい、これからも再度このわれめが活動して地震を起こす可能性のある場合、活断層といいます。東葛地方ではいまのところ活断層の存在は知られていません。(つづく)




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