東葛病院 地域に根ざしてともに歩む
 

東葛の健康

No.290 2008年9月号

東葛病院の医療 内科(循環器)

長時間同じ姿勢でいる状態や脱水症状を避ける

近年増加傾向にある肺血栓塞栓症とは

写真 東葛病院では、さまざまな急性期の疾患の診断・治療が行われています。今回は、近年増加傾向にあり、程度が重いと死に至る場合もある「肺血栓塞栓症」という病気について紹介します。

東葛病院 内科 吉田宏志

血栓=血の塊

 体の中では、心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしており、心臓から送り出された血液は胸やお腹の中の太い大動脈という血管を通って頭や手足に流れます。やがて血液はそれぞれの末端にある毛細血管を通って静脈に流れ込み、上・下大静脈を通って心臓に戻ります。戻ってきた血液は、再び酸素が豊富に含む血液になるため、肺動脈を通って肺の中を流れ、酸素をもらいます。酸素をもらった血液は肺静脈を通って心臓に戻り、再び全身に送り出されます(図1)。肺血栓塞栓症とは、この血液の流れの中で、静脈の中で作られた「血栓」という血の塊が肺動脈に詰まってしまい(写真1矢印)、その後に血液が流れなくなってしまう病気です。

図1
写真
写真
写真1

多様な原因で

 いろいろな原因で起こりますが、よく知られているのが「エコノミー症候群」といわれる長時間飛行機の中で座っていて発症する場合ですが、手術や骨折などで動けない状態が長く続いたりした時も起きます。血栓が出来る場所で多いのは下肢や骨盤の中です。
 突然の胸痛や呼吸困難で発症し、安静が解除され初めて立ち上がったり、排便・排尿した時に起きやすいされています。
 肺動脈にどの程度詰まるかによって症状は変わりますが、大部分が血栓で詰まれば、血液はその後の肺・心臓・全身に流れることができなくなるため、血圧が低下し(ショック状態)になり、死に至ります。
 東葛病院では、97年からの約10年間で31例の肺血栓塞栓症の患者さんを経験しました。年齢は24・86歳で、平均は68・5歳でした。性別では男性7例、女性24例(うち肥満女性は9例)でした。残念ながら、6例(2割弱)の方が亡くなられていました。

予防する工夫

 胸痛、呼吸困難、息切れなどを症状とする病気には狭心症や心不全などがよく知られていますが、肺血栓塞栓症も忘れてはいけない恐い病気です。
 日ごろ健康でも足の骨折など整形外科治療中や長距離の旅行などで長時間足を動かさない状態でいると下肢の静脈に血栓ができ、それが肺に飛んで詰まる危険性があります。時々足を動かしたり、脱水にならないよう水分補給をしたりして、血栓を作らないようにする工夫が重要です。

 


シリーズけんさ(33)

24時間血圧計(上)

写真 病院で測った血圧と、ご自宅で測った血圧が一致しないと感じたことはありませんか?
 血圧は緊張や興奮で上がり、リラックスしているときや、眠っているときは下がります。病院で血圧を測る時は緊張している場合が多いため、通常の血圧を反映できないことがあります。高血圧の方は、睡眠中の血圧が低下していることが多いのですが、夜間でも血圧が下がらない場合があり、そういう方は血管などのダメージが高くなってしまいます。また、早朝に特有に血圧が高くなる人は、脳卒中などの危険性が高いと言われています。
 それぞれの状態にあった高血圧の治療を行うために、24時間、30分ごとに血圧を測って一日の変動をみる検査が今回ご紹介する24時間血圧計です。
(次号に続く)
臨床検査技師・課長 清原佐和

<24時間血圧計における血圧平均値の基準値>
 ABPMガイドラインによる……<130/80mmHg
 JNC VIガイドラインによる
 昼間ABPM平均値………………<135/85mmHg
 夜間ABPM平均値………………<120/75mmHg



クスリ あ・れ・こ・れ

薬剤師とは?

『地味な仕事の積み重ね』でも…

薬剤師 高中妙子

写真 『白い巨塔』『医龍』『救命病棟24時』『ナースのお仕事』…医療現場を舞台にしたドラマってたくさんありますね。いずれも医師、看護師を中心にしたドラマです。子どもの頃の夢で『医師』『看護師』という子はよく聞きますが、『薬剤師』と答える子は何人いるでしょうか。恥ずかしながら私自身、子どもの頃は『薬剤師』という仕事があるなんて知りませんでした。
 では、薬剤師ってどんな仕事をしている人でしょう?「薬を調剤して説明する人」はい、確かにその通り。では他にどんな仕事をしているのでしょう? そこで、今回は意外に知られていない薬剤師の仕事についてお話したいと思います。
 薬局には薬がたくさんあります。これら薬の在庫確認や発注も仕事の一つです。薬害等で話題になっている『血液製剤』の管理もそうです。どの患者さんにいつ使用されたかが分かるように薬局で記録を保管しています。一気に静脈内に注入すると危険な注射薬の混注も行います。
 今後、抗癌剤の混注も行う予定です。東葛病院では『医薬品集』といって採用医薬品が載っている本があるのですが、この本の編集も行っています。どの薬を採用するかの検討も薬剤師が大きく関わっています。製薬会社からの情報だけに流されず、安全性、効果、価格などを他の薬剤と比較します。
 さらに、副作用を集積し、同じような副作用が起こらないように他の病院や薬局とも連携して情報を共有したりもします。また患者さんの中には「先生の前だと緊張しちゃって…」とこっそり胸の内を話してくださる方もいます。患者さんにとって近すぎず、遠すぎずちょうどいい距離にいる相手なのかもしれません。
 薬剤師の仕事は『地味な仕事の積み重ね』でも『誰かがやらなければならない仕事』だと思います。
 今回は一部しか紹介できませんでしたが、少しでも新しいことを知ってもらえたら幸いです。そして、個人的にはいつか薬剤師が出てくるドラマもみてみたいなぁ、と思います。



聴診器

環境問題を考える

 この夏、北極点の海氷が消えるかも! という報道に腰を抜かした方も多いと思う▼この夏といえば、ちょうど今、読者のみなさんがこの欄に目を通しておられる頃だ。折りしも、「地球温暖化ストップ!」「CO2の抜本的な削減」をスローガンにかかげて話し合われたG8首脳の「洞爺湖サミット」が終わったばかりだ。すでにヒマラヤの氷河が薄くなり、その先端の氷は融け、世界中に酸性雨が降り注ぎ、このまま何も対策をとらなければ、百年後には地球の気温が6・4度上昇するという。そうすると南北両極地域の氷が融け、海面が上昇して南洋のツバルなど標高の低い島嶼国は真っ先に消滅すると言われている。また、先進国への食糧や燃料の供給のために自国の民が苦しむなど、いつも「先進国」の身勝手によるトバッチリを受けるのは「途上国」の人々だ▼この先50年、いや10年、20年の中期スパンで対策をとらないと人類が破滅の道に向かうと言っても、けっして大げさではない時期にきている。(A・K)



東葛病院・付属診療所の医療活動




本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
(c)2002 Toukatsu Hospital, All rights reserved.