私たちの目指す医師像

東京勤労者医療会(勤医会)の沿革と理念

 東京勤労者医療会は現在一都2県にまたがり、3病院、11箇所の診療所、11箇所の訪問看護ステーション、看護学校を運営しています。
 東京勤労者医療会は、1946年設立された代々木診療所から始まりました。戦後まもなく公的医療が貧困であった頃に、医療に恵まれない人びとの健康を守ろうと、多くの人たちのカンパを元に設立されました。1952年には「代々木病院」となりました。
 現在の法人センター病院の東葛病院は1982年に「住民のいのちと健康を守り、よい医療をすすめる。みんなでつくる、みんなの病院」として開設されましたが、医療・経営に行きづまり倒産しました。
 職員や地域住民、全日本民医連の支援の下、住民のいのちと健康を守るため再建運動を進め、1993年東京勤労者医療会は東葛病院と龍樹会みさと協立病院と合同し現在に至っています。
 私たちは全日本民医連に加盟し「最も困難な人びとの立場に立って勤労者の健康を守る」「無差別・平等の医療を行う」という“言うは易く、行うは難い”理念を掲げています。その象徴的な事として、社会問題ともなっている差額ベッド料はいただいていません。
 医療経営は市民・住民の皆さんから多額の協力基金で支援を受け、医療活動を行っています。

勤医会の医師研修
 私たち東京勤労者医療会では、30年以上にわたり新卒医師を受け入れ、初期・中期の研修を行い地域での第一線医療を担う医師を育ててきました。
 地域医療を担う医師に必要とされることは、
 (1)プライマリーケア・総合的臨床力量であること
 (2)チーム医療でのリーダーの役割を果たすこと
 (3)地域の住民や患者様と供に医療制度改善のために行動すること
等であることと考えてきました。
 2004年度から始まった卒後臨床研修の「行動目標」には、医療人としての基本的姿勢・態度を身につけること、チーム医療を実践する力量を身につけることや医療の社会性を認識することなどとなっています。
私たちは生涯を通して目指す医師像として、1984年にWHOの示した五つ星の医師を提言します。
 (1)質の高い医療(保健・予防活動を含む)ができる医師(Health Care Provider)
 (2)コミュニケーション能力に優れた医師(Communicator)
 (3)適切な意志決定のできる医師(Decision Maker)
 (4)マネジメント能力に優れた医師(Manager)
 (5)地域社会のリーダーシップがとれる医師(Community Leader)
 一つには医師は単なる「職人・技術者」であってはならないと言うことだと思います。
 二つ目は、狭い意味での「技術」だけでは患者様の治療はできないこと、安全な医療の提供はできないことが明確になってきていることです。

私たちの目指す医師像
 東京勤労者医療会の地域での主な役割は、「地域の第一線の医療を担う」事です。また近年、介護保険制度や障害者福祉制度の整備が進む中、高齢者や障害者の介護、福祉と連携した医療、小児医療、予防医療活動など広大な分野があり、地域医療の役割・任務は益々重要になってきています。
 東京勤労者医療会は「地域の第一線の医療」を担いながら、いわゆる「保健・医療・福祉の複合体」として発展してきています。

(1)総合的な臨床能力と一定の専門性
 救急医療、急性期医療への対応、Common diseaseの治療、慢性疾患の治療管理、検診などの保健予防活動、在宅医療・介護など、地域住民の健康を支えるためには重要で膨大なニーズがあります。こうしたニーズに応えるには総合的な臨床能力と、一定の専門性を身につけることが必要です。
(2)中小病院と診療所そして介護福祉の意義
 私たちの法人は、中小病院、診療所、訪問看護ステーション、介護施設など多様な施設体系を持っています。これらは民医連・東京勤医会の原点であり、「地域の第一線の医療」を担うにふさわしく「地域密着」「アクセスの良さ」「お互いの顔が見える」などの特長を持っています。私たちはこうした施設で働き、地域の信頼を得る態度・力量を身につけます。
(3)患者さんの抱える問題を解決する方策の立案(マネージメント、問題解決能力)
 医療とは単に疾患を見るだけでなく、患者さんの生活全体も診ていくものです。地域医療は生活全体を診る視点抜きでは実践できません。生活の中で患者さんの抱える問題を解決していく力量を見につけます。
(4)患者さん、住民とともに地域医療・福祉を構築していく姿勢
 現在の医療制度は不十分なところ、改善するべきものが沢山あり、「狭い意味」での医療活動をしているだけでは、患者さんの「健康権」を守る事ができないことがあります。
 患者さんの声に耳を傾け、患者さんと共に医療・福祉を改善・構築していく事が必要となります。
(5)医療経営に対する視点を持ち医療活動を行うことができる。
 病院や医療機関も一つの事業体であり、かつ住民の健康を守るという極めて大きな社会的責任を負い公共性の高い事業を行っています。病院が経営的に持続できなければ、医療という公共的な事業も営めません。
(6)所属する病院所の公共的な存在を理解し、医師としての社会的責任を果たすことができること。
 医療という営みの中で、医師は大きな裁量権を与えられていると同時に、大きな責任を負っています。その責任は個々の患者さんに対するものだけでなく、病院そして地域医療の持続性やコンプライアンスにも一定の責任を負っています。

(7)医師として職員集団の中で医療を展開でき、適切なリーダーシップを発揮できること。
 日常の医療は病院や診療所などの組織内で集団的に行っています。
 その際、医師と事務、看護師、技術系職員等の間には「医療の中での責任の所在に関して権威勾配」があることに留意し、率直でかつ友好的なチームの形成に気を配れることが必要です。
(8)医師の役割と責任は大きなものです。だからこそ医局の「連帯」「相互扶助」の精神が必要です。医師一人一人が診療科の枠を超えて協力し、医局内がフレンドリーであり、かつ率直な相互批判ができる建設的な雰囲気作りに協力し合います。また各医師の役割を討議・話し合える医局運営を目指します。

おわりに
 医師本人をはじめ人びとが求め、理想とする医師像には様々あると思いますが、私たちの目指す、「お金のあるなしで差別しない」「患者さんと医療従事者の協同の営み」「地域に根を張って住民の健康を守る」という理念は、理想とされる医師の一つの典型だと思います。
 



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